八ヶ岳南麓、はじめての物件さがし(前編)

内窓

前回の記事では、リモートワークが決まってから移住先の候補を八ヶ岳南麓・小淵沢周辺に絞り込むまでの経緯についてまとめました。

今回は、その八ヶ岳南麓での物件さがしについて書いてみたいと思います。

まずは不動産情報サイト

小淵沢周辺で実際に物件を見てみることにしたやつなんとやつよめ。さっそく不動産情報サイトを使って候補物件の洗い出しを始めました。

メインで使ったのは、小淵沢周辺(山梨県北杜市)の掲載物件数が一番多かったアットホーム。これにSUUMOホームズ、地元不動産会社のサイトなども使って気になる物件をピックアップしていきます。

複数のサイトを併用したのは、ひとつのサイトにしか掲載されていない物件を見落とさないためという当たり前の理由に加えて、同じ物件でもサイトによって掲載されている写真や情報の量が大きく異なることがあるため。最初に見たサイトでは気になる物件の写真が5枚しか載っていなかったのに、別のサイトで開いてみたら20枚も!なんて時には思わずガッツポーズが出ることも。判断材料は多いに越したことはありません。

地域を指定して、いざ検索

さて、アットホームを開いて 買う>中古一戸建て>山梨県 と進むと、4つの選択肢が出てきます。

地域から探す
沿線・駅から探す
地図から探す
路線図から探す

さあ、どれをポチッとすれば良いでしょう?

答えは「路線図から探す」

以前の記事でも書いたように、八ヶ岳は長野県と山梨県の間に広がる連峰です。そしてお目当ての小淵沢は、山梨県の北西端、長野県との県境に位置します。駅から5分もクルマを走らせれば、そこはもう長野県。なので小淵沢周辺で物件を探す場合、長野県側(諏訪郡富士見町)も検索範囲に含めたい…。そんな時に「路線図から探す」を選ぶと、県境を越えて複数の最寄駅の指定ができるのです。

やつなんの場合は決めていた条件に合わせて「小淵沢」「甲斐小泉」「信濃境」の3駅を指定しましたが、八ヶ岳南麓を広範囲に探すのであれば、さらに「富士見」「甲斐大泉」「清里」、山裾方面も入れるなら「長坂」「日野春」あたりを加えてみても良いかも知れません。

アットホームの最寄駅指定画面
アットホームの「路線図から探す」で複数の最寄駅を指定

あとは価格や間取りなどの希望条件を少し広めに入力して、検索結果を見ると…果たして気になる物件は出てきたでしょうか?やつなんの場合、最初は間取りなどの条件をゆる~く設定したこともあって、気になる物件が10件以上見つかりました。この「条件ゆるゆる検索」、物件を数多く見ることで俯瞰的にその地域の傾向や相場が掴める上に、絶好の暇つぶしにもなるのでお勧めです。

気になる物件の立地を確認

他のサイトも利用して気になる物件を一通り洗い出したら、次は各物件の立地を確認して、候補の絞り込みを行います。

まずはサイトに記載された住所から。

八ヶ岳南麓はそのほとんどが小淵沢を含む山梨県側の「北杜市」と、長野県側の「諏訪郡富士見町」のどちらかに属しています。なので前述の最寄駅で検索した場合、物件の住所は「北杜市」か「諏訪郡富士見町」のどちらかになるのですが、実は北杜市も富士見町も、八ヶ岳だけではなく谷を挟んで反対側の南アルプスにまで広がっているため注意が必要です。北杜市だと「白州町」「武川町」、富士見町は境界が入り組んでいますが「富士見」「落合」の一部が南アルプス側。サントリーの白州蒸溜所でも知られる美しい森が魅力的な地域ですが、JRの駅に出るにも中央高速に乗るにも八ヶ岳との間を隔てる谷を一旦下って登らなくてはならないため、交通の便を気にする人にはやや不向きです。なのでやつなんの場合はまずこれらの地域を選択肢から外しました。
※北杜市や富士見町の近隣には、南佐久郡南牧村や諏訪郡原村というそれぞれ素晴らしい別荘地を持つ自治体がありますが、地理的には八ヶ岳の東麓/西麓にあたるため南麓とは区別しています。

次に、Google Mapsを使ってより詳細な位置を特定します。

最近はサイト上に地図が載っている物件が増えたので、大抵はその場所をGoogle Maps上で再確認すれば済むのですが、その地図が無かったり、または別の場所(例えば不動産会社の位置)を示している場合は、物件の写真と周辺施設の情報(郵便局まで300mとか小学校まで1,150mといった記載)を元に航空写真とストリートビューを使って物件の位置を特定していきます。これがなかなかの頭脳戦(?)で、晴れて位置を特定できた暁にはいわゆるエウレカ効果(ユーレカ効果/アハ体験)を実感できます。そんなことをしなくても出稿元の不動産会社に問い合わせればたぶん教えてくれるのですが、自力で探し出すのもまた一興なり。

Google Maps上で位置が特定できたら、駅や学校などの主要施設との位置関係に加えて、自分で設定したいくつかの条件について確認していきます。やつなんが重視したのは以下の通り。

・別荘や移住者が多い地域
 →ストリートビューや航空写真で街並みをチェック!
・適度な自然が周囲に残されていること
 →ストリートビューや航空写真で周囲をチェック!
・沢筋の脇や極端な傾斜地、窪地ではないこと
 →Google Earthやその他アプリで地形をチェック!
・幹線道路や線路からある程度離れていること
 →地図上で位置関係をチェック!
・幹線道路に出るまでの道路事情
 →ストリートビューや航空写真で経路をチェック!

北杜市側の別荘地は主にレインボーライン(八ヶ岳広域農道)の周辺から山側にかけて、富士見町側の別荘地は鉢巻道路(県道484号線)の周辺に集中しています。もちろんそれ以外の地域にも別荘物件は点在しますが、移住初心者のやつなんは移住者やニ拠点生活者が多い場所を優先したかったので、別荘地から離れて建っているような物件は候補から外しました。

周辺の自然環境は見晴らしの良い丘の上から木々に囲まれた森の中までそれこそ千差万別なのですが、別荘地とはいっても予想外に建物が密集していたり、場合によってはすぐ目の前がメガソーラーだったなんてことも。不動産情報サイトに載っている外観写真は、いわゆる「がっかり観光名所」のポスターなみにアングルが工夫されていると考えて、ストリートビューと航空写真で物件の周辺を念入りにチェックします。ちなみに北杜市は日照時間日本一。今でこそ条例で制限をかけていますが、太陽光発電にはもってこいの場所のため注意が必要です。

その他、山麓の傾斜地だけに大雨などによる土砂災害の危険性や、周囲の静けさなどについてもしっかり確認。特に道路事情については、幹線道路に出るまでの道が極端に狭かったり未舗装だったり、たまに通るだけならともかく定住による日常的な通行にはストレスになるような場所が結構あります。冬は良くても夏になると周囲の枝葉が伸びて道巾が極端に狭くなるとか、逆に夏は良くても冬は凍結で坂道が登れないとか、大雨のたびに砂利が流されて凸凹だらけになるとか。築2~3年の超優良物件が早々に売りに出されている場合などは特に、こういった立地トラブルが隠れていないかしっかりチェックが必要です。

サイトに戻って詳細をチェック

立地で候補を絞り込んだ後は、いよいよ内見に向けた最終選考。不動産情報サイトに戻って建物や敷地の詳細情報をチェックします。一般的な確認事項については不動産購入ガイドのような書籍やサイトにお任せするとして、ここでは「八ヶ岳ならでは」「別荘地ならでは」のチェックポイントをいくつか。

① 写真

別荘として建てられた物件は、普通の住まいと比べてその使われ方に幅があります。夏だけの利用なのか、通年での利用なのか? たまにしか来ないのか、頻繁に来ているのか? 最近まで使っていたのか、もう何年も使っていないのか? などなど。

夏だけの利用が前提だと、建物の構造や設備が冬の八ヶ岳の暮らし(極寒!)に向いていないかも知れません。たま〜にしか来ないのであれば、快適な居住性よりもコスパやデザインを優先しているかも知れません。何年も使っていなければ、築年数以上に傷みが進んでいるかも知れません。

このようなポイントは最終的には実際に現地で見て確認するしかないのですが、ある程度は写真からも読み取ることができます。キッチンに調味料が並んでいる→割と頻繁に利用している、とか、トイレのコンセントが全部埋まっている→凍結対策がされている(たぶんトイレ以外も)、とか、庭の草花が綺麗に整っている→定住かそれに近い状態、とか。もちろんそこまで細かく観察しなくても、写真から受ける直感的な印象だけでも物件の良し悪し(所有者の手の掛け具合)はそれなりに伝わってきます。実際にやつなんが購入した家も、最初に写真を見ただけでピンときた物件でした。

② 土砂災害警戒区域

八ヶ岳南麓では、詳細情報の備考欄に「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」と書かれている物件をよく目にします。ハザードマップで確認してみると、やはり山麓だけあってかなりの範囲が警戒区域に指定されていることが分かります。やつなんの場合は、特に危険とされ建物の構造にも制約を受ける特別警戒区域(レッドゾーン)は回避、制約のない警戒区域(イエローゾーン)については物件ごとに立地を吟味した上で判断することにしました。

ちなみに土砂災害特別警戒区域、土砂災害警戒区域ともに不動産取引の際は重要事項説明書に明示し説明する義務があるのですが、不動産情報サイトの段階では掲載されないこともあるようなので、ハザードマップと照らし合わせて確認が必要です。

また特別警戒区域については、砂防ダムの建設などによって安全性が高まった結果、指定解除(警戒区域に変更)になる場合もあるので、どうしても気に入った物件がある場合は今後の見通しについて自治体に問い合わせてみても良いかも知れません。ちなみに警戒区域については地形自体に大きな変化がない限り解除されることはないようです。

③ 下水道

八ヶ岳南麓では、上水道はかなり整備されているものの、下水道の普及率はまだそれほど高くありません。特に別荘地については多くが浄化槽に頼っている状況で、ほとんどの物件には、設備欄に「浄化槽」の記載があります。

浄化槽の場合、下水道料金が不要な代わりに、法で定められた定期的な検査と清掃、ブロア等の設備の修理交換などで下水道料金を上回る維持費が掛かるのが普通です。また将来的に下水道が整備された際には、下水道への接続工事にかなりの費用が必要になります。

とはいえ下水道完備を条件にすると選択肢が相当限られてしまうため、これはもう必要経費として割り切るしか無さそうです。

④ 私道

行き止まりの道路の周囲に数軒の別荘が固まっている場合などによく見られるのが「私道持分あり」と記載された物件。道路に面した家の家主さんが共同でその道路を所有し管理していることが分かります。

私道については共同所有ゆえのトラブルがたまに話題になることがありますが、八ヶ岳南麓では雪が積もった際の除雪や、大雨による未舗装路の砂利の流出対応などに注意が必要です。市道や町道ではないので、自治体は原則ノータッチ。なので「私道持分あり」と書かれた物件は、その管理方法について周囲の家主さんや仲介の不動産会社にしっかり確認しておいた方が良さそうです。

⑤ プロパンガス

八ヶ岳南麓は都市ガスの供給エリア外です。なのでほとんどの物件は設備欄に「プロパンガス」の記載があります。プロパンだからといって使い勝手に特にネガティブな面はなく、都市ガスと同じ感覚で使えます。ボンベの交換もいつの間にかガス屋さんがやってくれます。

ただし料金は割高なので、暖房や給湯については灯油で賄った方がたぶんお得。さらにガスコンロもIHにすればプロパンの利用を完全に無くすことも可能ですが、停電(たまにあります)すると調理が全くできなくなる上にお湯も使えなくなる(灯油の給湯器も運転には電気が必要)のでちょっと勇気が必要です。

⑥ 煙突

八ヶ岳南麓ではサンタクロースが通れるほどの立派な煙突を備えた物件をよく見かけます。場所が場所だけに素敵な暖炉や薪ストーブがあるんだろうなぁと期待して間取り図を見ると、何かがおかしい。リビングの写真を開いてみても、暖炉も薪ストーブも見当たらない…。

実は屋根の上の立派な煙突、結構な確率でフェイク(装飾)なんです。暖炉や薪ストーブは手間が掛かるから要らないけど、建物外観のバランス的には煙突があった方が美しい…そんなところでしょうか。邪魔になるものではないし、山荘的な雰囲気がぐっと増すのでこれはこれでアリだと思います。

もちろん本当に暖炉や薪ストーブが付いている物件も多々あります。その場合は設備欄などに記載されているので、煙突だけで判断せずに詳細情報を確認しましょう。

⑦ 吹き抜け

別荘として建てられた物件には、お約束のように吹き抜けがあります。たとえ平屋の建物でも、屋根裏を無くして天窓から燦燦と陽光が降り注いでいたりします。

でも吹き抜けって冬場は暖気が上がってしまって寒いんだよね~、という訳で最初は吹き抜けなしを考えていたやつなんですが、あれこれと物件を見ているうちに解放感という誘惑に負けました(シーリングファンが付いていれば何とかなるんじゃね?という甘い考えもありました)。その代償は冬の灯油代にしっかり反映されている訳ですが、それについては長くなりそうなのでまた別の機会に。ちなみに数は少ないながらも吹き抜けなしの物件もあるにはあるので、冬の暖かさを重視する方はじっくり検討してください。

⑧ 管理費

管理別荘地内の物件の場合、別荘地全体を維持管理する会社に管理費を支払う必要があります。金額は別荘地の規模やサービスの内容によってさまざまで、大抵は詳細情報のどこかに明示されています。不在時の換気や水抜きなどの対応が不要になる分、定住の場合は安くなることもあるようなので管理会社に問い合わせてみましょう。

最終的な内見候補は?

さてさて、サイトでの検索→立地の検討→詳細チェックという流れを経て、果たしてどれだけの物件が内見候補に残ったでしょうか。やつなんの場合は「3件」でした。

最初にピックアップした15~16件ほどの物件のうち、立地条件で約半数が脱落、その後の詳細チェックでは主に築年数と建物面積(見ているうちに欲が出ました)での脱落が相次ぎ、写真審査も含めると全ての面で納得できる物件は2件。これに、かなり微妙なところではあるけど2件と同じ不動産会社の扱いなので一緒に見ちゃえ!的なノリで残した1件を加えて合計3件。サイトのフォームから問い合わせてみると3件とも案内可能とのことだったので、さっそく内見の予定を組んでもらうことにしました。

という訳で、ついに現地での内見へと進むのですが、今回は一旦ここまで。続きは後編でお話ししようと思います。ちなみに「内見(ないけん)」は中古や賃貸の物件に対して使う言葉で、見る対象が新築物件の場合は「内覧(ないらん)」になります。行ってみたいものですね、内覧。


漫画「正直不動産」
NHKのドラマにもなった漫画「正直不動産」
不動産取引の裏側がテーマ毎に一話完結でわかり易く描かれています。
物件さがしと並行してマンション売却を目論んでいたやつなんは「ダブル両手」「トリプル両手」がツボりました。

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