前回に引き続き、八ヶ岳南麓での物件さがし(後編)をお送りします。
3つの候補物件
前回の記事では内見する物件を3件に絞り込むところまでをまとめました。
本命候補
不動産情報サイトに掲載された写真を見た瞬間にビビビッときた(古っ)物件。状態の良さそうな建物、整頓された室内、理想に近い間取り。ストリートビューにより周辺環境も確認済み。情報公開から日が浅いにもかかわらず既に数件の問い合わせが来ているとのことで、商談まで進むことができるかどうかが気になるところ。
間取り :★★★★★
状態 :★★★★★
立地 :★★★★
建物面積:★★★★
敷地面積:★★★★
対抗候補
本命よりも手の込んだ造りと、各部屋の広さが魅力の物件。駅やインターからやや距離があることと、道路を挟んだ南側正面に他の家々が並んでいることがちょっと気がかり。ストリートビューの範囲から微妙に外れていて家の前までは到達できないため、周辺環境については現地での確認が必要。
間取り :★★★★★
状態 :★★★★
立地 :★★★
建物面積:★★★★★
敷地面積:★★★★
大穴候補
周囲の森と一体化した広い敷地が魅力の物件。ただし写真で見た建物にどこかくすんだような印象があることと、部屋と廊下が一体化したような一風変わった間取りに要注意。掲載写真も少なくストリートビューの範囲からも完全に外れているため、現地に行ってみたら大あたりor大はずれもあり得るギャンブル物件。
間取り :★★
状態 :★★
立地 :★★★★
建物面積:★★★
敷地面積:★★★★★
※写真や周辺地図などがあると非常にわかり易いのですが、いわゆる大人の事情と各方面への配慮から掲載できません。ご了承ください。
これらの物件それぞれについて、現地でチェックしたいところを頭に叩き込んだ上で内見に臨みます。ちなみに各物件の築年数は13年〜15年、敷地面積は135坪〜、お値段は2千万円台の前半~中盤ほど。大きな買い物であることに違いはありませんが、大都市圏の数分の1の価格で広々とした住環境が手に入るのは非常に魅力的です。
いざ現地へ
あれやこれやと下調べやら、当時住んでいた都内のマンションの売却に向けた手配などをしているうちに、早くも内見当日。有休も取って準備万端、午後からの案内に合わせて途中で昼食などをとりながらのんびりと八ヶ岳に向かいます。
都内の混雑さえ抜けてしまえば平日の中央道は至って快適。小仏峠、笹子峠を越えて、甲府盆地を抜けると正面に八ヶ岳が見えてきます。小淵沢インターを降りて道の駅で少し時間を潰してから、定刻どおりに不動産会社へ。簡単な挨拶の後、さっそく現地へと案内してもらいます。
1件目:大穴候補
まずは1件目、大穴候補の物件へ。木々の間から南アルプスが見渡せる気持ちの良い丘を進みます。
ちなみに小淵沢周辺の別荘地帯、谷向こうの南アルプスは割とどこからでも見えるのですが、肝心の八ヶ岳は距離が近いせいもあってか、森の木々に遮られあまりよく見えません。もし八ヶ岳を眺めたり写真を撮ったりしたいのであれば、小淵沢駅(駅舎の上に360度見渡せる展望台があります)の辺りまで下るか、田畑が多く見通しの良い長坂町白井沢や大泉町谷戸、長野県側の富士見町あたりまで移動することをお勧めします。
ちょっと話が逸れましたが、車は5分と走らずに現地に到着。周囲には敷地を広めにとった別荘が整然と立ち並び、なかなかの雰囲気です。内見する建物に目を向けると…写真から感じていた通り、築年数なりにやや古びていてくすんだ印象。まあ中古物件だしこんなものかと思いながら案内されるままに玄関をくぐり屋内へ。
う~ん…。最初に考えたのは「ハウスクリーニングを頼むといくら掛かるんだろう?」ということ。別に散かっている訳でも大きく目立つ汚れがある訳でもないのですが、シンクやトイレ、浴槽や水栓などはことごとく光沢を失い、窓ガラスや洗面所の鏡もうっすらと曇っていて、そこはかとなく廃墟感が…。広さが魅力の庭も、生い茂った雑草の中に朽ちかけたガーデンテーブルやベンチが放置されているような状態で、綺麗に整えるまでに結構な時間と労力が要りそう。気になっていた変わった間取りもやはり定住では使い勝手が悪いと判断して、大穴は万馬券に変わることなく早々に内見終了となりました。
立地自体は良かったため、リフォーム前提であればまた違った見方ができたのかも知れませんが…。1件目の内見を終えて感じたのは「写真から受ける印象って結構当たるんだ!」という妙な満足感と、「やっぱり中古だとこんなもんかねぇ…」という大きな不安でした。
2件目:本命候補
さて、中古物件そのものに不安を感じつつも気を取り直して向かった先は、この日メインの本命候補。ストリートビューを何度も見返していたので、初めて来たのにずっと前から知っていたような妙な感覚です。
周囲に木々が多いため眺望は1件目よりも劣りますが、その分しっとりとして目に優しい落ち着いた環境。別荘地の中心に近いことから適度に人の気配が感じられるのも、山の中とはいえ仙人的な暮らしを望んでいる訳ではない身としては安心感を覚えます。ここに決まるといいのですが…。
こちらの本命候補、内見に合わせてわざわざ来ていただいたのか、家主(売り主)のご夫婦が出迎えてくれました。一部屋一部屋、家主さん直々の明快かつ丁寧な説明を受けながら見て廻ります。う〜ん、この手慣れた感じ…今までにどれだけの人が内見に訪れているんだろう?果たして商談の機会は自分にまで回って来るのだろうか…?頭の隅ではそんなことを気にしながらも、真剣に説明に聞き入ります。というのもこの物件、先ほどの1件目とは対照的に、新築は言い過ぎにしても「築3年です」と説明されたら信じてしまうほどに良好な状態が保たれていて(やっぱり写真から伝わってくる印象って正しいんですね!)、敷居を跨いだ瞬間からやつなんもやつよめももうすっかり本気の購入モード。細部まで見落しのないように、そして家主さんに失礼のないように(中古物件の場合、不動産会社はあくまでも仲介役で、売る売らないの判断は家主さんが行います。そして遠方からわざわざ内見に立ち会うということは、買い手の顔を見て判断したいという気持ちの表れではないかと考えました)全神経を集中して事に当たりました。まあそれでも多少の見落としは出てくるのですが、それについては次の機会に。
屋内の後は外回りもしっかり見て廻って、光回線と携帯の電波が来ていることも確認して、最後に家主さんに感謝の意を伝え、2件目の内見は非常に良いムードで終了しました。もう既にお腹一杯、大満足ではあるのですが、まだ購入できると決まった訳ではないので気合を入れなおして3件目に向かいます。
3件目:対抗候補
この日最後の物件は、床面積が1番広くて内装にも手が掛かっていそうな対抗候補。暖炉こそないものの、床の間つきの和室、こだわりを感じる照明器具、さりげなく壁に埋め込まれた飾り棚、断熱性に優れるトリプルガラスの窓など、別荘にしておくにはもったいないような物件です。
こちらは1件目と同様に不動産会社の方の案内で見て廻ります。室内に入る前にまずは気持ちの良さそうなウッドデッキへ。正面に並ぶ他の家は高低差があるためあまり気にはなりません。眺望もまあまあひらけていて、屋根越しにはなるものの南アルプスの山並みも望めます。本命候補よりやや古い建物も、本命同様に手入れが行き届いていてさほど古さを感じません。多少奥まった立地でも、少しだけお値段が高くても、これはこれでお買い得か…?
屋内に入っても好印象は変わりません。窓は大きくて明るいし、ひとつひとつの部屋の広さにも余裕を感じます。そんな中でひとつだけ気になるとしたら…リビングから2階へと一直線に続く急な階段。内見前から写真で知ってはいたのですが、実際に見て、上り下りしてみるとこれがなかなかの代物。小さな子をもつ親としては池田屋やASIMOの階段落ちの映像が頭をよぎります。いやもしかしたら子供よりも最近足腰の衰えを感じつつある自分の方が危ういかも…。本命候補が踊り場つきのかなり緩やかな階段(家主さんのこだわりのひとつ)だったのと対照的です。
そして、そういった目線で考えると外構にも気になるところが出てきました。この物件の敷地は南側のみが道路に面しています。なので敷地への入り口も駐車スペースも南側。そして建物は庭を広くとるために北側ぎりぎりに建っています。まあ南側道路の住宅ではごく一般的な配置ではあるのですが、ここは八ヶ岳南麓。多くの家の敷地が斜面に沿って「北高南低」になっています。この物件も例外ではなく、駐車スペースにクルマを入れてから玄関を入るまでに石段が12段。家の中の階段ほど急ではないにしても、子供を連れていたり、大きな荷物があったりすると少々気になるレベルです。ちなみに本命候補は入り口も駐車場も東側なので玄関との高低差は建物の基礎の高さのみ。やはり対抗は対抗のままで終わるのか…?
そしていよいよ最終選考
対抗候補の内見も無事に終わり、一行は今後の相談をするために不動産会社へ。コーヒーを淹れていただいたりしながら、まずは各物件について補足の説明を受けます。
1件目。家主さんの事情で数年前から全く利用がなく、今後も利用の予定が立たないので売りに出された物件とのこと。やはり年単位で利用がなく、またその間に掃除やメンテナンスも入れないとなるとプチ廃墟化は避けられないようで、表面的な汚れはともかく、目に見えない部分、例えば壁の裏側のカビや傷み、給湯器や浄化槽といった付帯設備の劣化にも不安が残ります。ちょっと使いづらそうな間取りも含めてやはりここはパスということに。でも眺望が良く牧歌的な雰囲気のある立地はやはり魅力的で、今でも近くを通るたびにこの物件のことを思い出します。
2件目。やはり結構な人気らしく、我々の前にもすでに数組が内見を済ませて検討中とのこと。あ〜やっぱりね…。階段落ち覚悟で3件目を本命に格上げするか…。ライバル多数でこれは無理ゲーと思ったやつなんでしたが、気を取り直して詳しく話を聞いてみると…この不動産会社では、内見の順序に関係なく、また入札や抽選という形でもなく、「買います!」と最初に手を挙げた人を優先する方式をとっていて、現時点ではまだ誰も手を挙げていませんと。…ん?ということは今ここで手を挙げればそのまま商談に進めて、家主さんがOKであれば売買成立ですか?と尋ねたら「その通りです」と。「じゃあ手を挙げます!!」と言いたい気持ちをグッと堪えて、とりあえず3件目の説明も受けてから検討することにしました。ちなみにこの物件は別荘と言っても2拠点生活に近い使い方がされていて、程よい利用頻度と家主さんの丁寧な扱いによって良好な状態が保たれていたようです。
3件目。床面積が45坪ほどもある別荘物件はこの付近ではなかなか出ないとのこと。確かに不動産情報サイトに掲載されている物件は30坪前後のものが多く、たまに見つかる広い建物は飲食店やペンションばかり。やはりこの物件、状態が良いことも含めてかなり魅力的です。ただ、まだ手を挙げてはいないもののかなり真剣に検討中の先客さんがいるとのこと。さっき見た子持ちにはキツそうな階段や、定住にはやや不便な立地であることを考えて、後ろ髪を思いっきり引かれながらもこちらは先客さんに譲ることにしました。
という訳でついに候補は本命の1件のみに。あとは「今買う」か「もう少し様子を見る」かの判断だけです。
八ヶ岳南麓の中古物件事情
物件を探し始めてまだ1ヶ月、そして内見は今日が初めて。この先ずっと暮らす家をこんなに短期間で決めてしまって良いものか?もっと時間をかければさらに良い物件が出てくるのではないか?そんな迷いに対する答えを求めて、小淵沢周辺の物件事情についても訊いてみます。
まずは供給状況。今回の内見で廻った辺りに範囲を絞ると、売りに出る中古物件は月に1〜2件程度。もちろんその中には定住に不向きなものや、築年数がかなり経過した物件も含まれます。そして価格は若干ながら上昇傾向にあるとのこと。これについてはやはりコロナ由来の需要増の影響が出始めているようです。ただし普通の住宅とは違って別荘は無くても別に困らないもの。需要があるなら今のうちに売ってしまおうと考える家主さんもいるようで、今後は供給が多少増えるかも知れないとのことでした。
ちなみにこれは内見をした2020年当時の話。その後も趣味で(?)たまに不動産情報サイトを覗いていますが、供給数は変わらず横這い、価格については1〜2割ほど上がっているように感じます。
次に需要について。コロナ以降はサイトに載せた物件情報の閲覧数が明らかに増えていて、それに比例するように問い合わせや内見も増加。また中古物件だけでなく土地の購入も増えてきているとのこと。
そういえば八ヶ岳に引っ越して来て以来、常にどこかで新築工事を見かけます。もしかすると新築の方が中古物件の供給量より多いかも知れません。
そんな訳で、内見の時点では(たぶん3年経った今もですが)需要が供給を上回っている状態。セールストークを抜きにしても、供給数から考えて新たに気に入る物件が出てくるまでにはそれなりの月日が掛かりそうです。そしてその物件が今日の本命を超えるかどうかも、似たような価格で買えるかどうかも、その時になってみないとわからない…。要約すると「いつ買うの?今でしょ!」(やや古)という状況。どうやらここは腹を括るしか無さそうです。
購入の意思を伝えました
さて、そうと決まれば善は急げ。ちょっと気になっていたゴミステーションの利用(当時、とあるライターが書いた北杜市のゴミ出し問題がネットで話題になっていました)や町内会への加入などについて問題がないか確認した後、今日内見した本命物件を購入したい旨と、契約から引き渡しまでのおおまかな希望日程を伝えて打ち合わせを終えました。あとは家主さんからの返事を待つだけです。
そんなこんなで
内見の翌日には不動産会社から連絡があり、家主さんが売却に応じてくれること、またこちらが希望した日程どおりに手続きを進めてくれることが決まりました。契約はまだ先ですが、これにて購入はほぼ確定。マンションの売却と同時進行で話を進めていたため、日程をこちらの都合に合わせていただいたことは本当に助かりました。
ちなみに「マンションや持ち家の売却」と「新しい家の購入」を同時に進める場合、仲介の不動産会社を同じにした方が日程の調整などの点でメリットがありそうですが、売却はともかく購入に関しては、全国展開の大手ではなくその土地の諸事情に詳しい地元の不動産会社にお願いした方がなにかと安心です。特に引っ越し先に知り合いが全く居ないような場合は、現地の情報収集やアフターケアなどの面で不動産会社の担当さんが非常に頼りになります。
さて、こうして決めた八ヶ岳南麓の家、3年住んでみてアタリだったのかハズレだったのか…。次回はそのあたりについて書いてみたいと思います。ではまた!
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