八ヶ岳南麓、住んでみて分かった物件選びの勘どころ

間取り図(イメージ)

前回の記事では八ヶ岳南麓での家探しについて書きました。

その家に引っ越して3年、今回は「住んでみて分かった物件選びの勘どころ」と題して、これから八ヶ岳南麓で物件を探したり家を建てる方に向けたプチアドバイスを思いつくままに並べてみます。「そんなの常識やん!」的な話もちょいちょい出てくると思いますが、よかったら最後までお付き合いください。

① やっぱり寒い!八ヶ岳南麓の冬

重々承知の上での移住ですが、それでもやっぱり八ヶ岳の冬は寒い!
約900m~1,100mと、近隣の大泉や富士見などと比べれば標高の低い小淵沢の別荘地ではありますが、それでも12月から3月にかけてはかなり冷え込みます。日中でも氷点下、日没後は-10℃を下回るような日が当たり前のように続くこともしばしば。まあ北海道に比べればまだ温暖とも言えますが

なので重要になってくるのが、家の断熱性能。新築であれば高気密に断熱材マシマシ&高性能複層ガラス&樹脂サッシと行きたいところですが、中古物件の場合は間取りや立地など他の希望条件との兼ね合いもあってなかなか理想通りにはならないもの。この記事を書いているやつなんの家を例にあげると、窓ガラスこそ複層になってはいるものの、その他の部分は普通の木造住宅、気密性もそこそこでサッシもアルミ。リモートワークで一日中家にいることも多いので、200リットルの暖房用灯油タンクが早い時は半月で空になります。金額に換算すると、ひと月あたり約4万円…。これに寝室用のオイルヒーターや水まわりの凍結防止ヒーターなどの電気代が乗ってくるので、なかなか痛い出費です。

という訳で、これから物件を探したり家を建てる方は寒さ対策のチェックを万全に。

・できれば高気密/高断熱住宅(あまり見かけませんが)
・窓はなるべく少なく小さく(解放感とのバーターですが)
・トリプルガラス&樹脂サッシ(これもあまりないかも?)
・リビングと外壁の接面が少なくなるような間取り
・必要以上に広いリビングは避ける(寝室も同様)
・吹き抜けは覚悟の上で(シーリングファンはほぼ無力)
・リビング直結の階段にも要注意
・据え置き型のストーブはできるだけ部屋の中央寄りに
・大型灯油タンクは必須(後からでも追加できますが)
・安価で薪が手に入る伝手があれば薪ストーブという手も?
・陽当たりが良く風当たりが弱い立地
・標高低めの立地(その分夏は暑くなりますが)

とは言え、いろいろと頑張ったり我慢したとしても節約できる燃料費はたぶんひと冬で数万円、20年住んでも100〜200万円程度の差。だったら断熱性能はほどほどにして、その分安い物件を手に入れた方がお得なような気もします。

② 意外と気になる!道路の位置

やつなんの家の敷地は南側と東側が道路に面した、いわゆる南東角地。都市部では大人気の立地ではあるのですが…ここ八ヶ岳南麓では少々事情が異なります。

そもそも南東角地が人気の理由は、道路があることで隣家との距離が保て、その分陽当たりや見晴らしが良くなるという点(建蔽率の緩和措置などの理由もあるようですが)。周囲に建物が密集していたり、庭が広くとれないような場合には理想的な立地だと思いますが、建物が少なく敷地面積も広い(北杜市が定める基準は1区画500㎡以上)八ヶ岳南麓では南東角地から受ける恩恵はさほど大きくなく、逆にクルマや人通り(特に朝夕は犬の散歩多し)、道路に沿って立つ電柱や電線、そして舗装路であれば道路そのものの存在感が気になるというデメリットの方が大きいように感じます。もちろんカーテンを吊るしたり目隠しの植え込みを造ったりすれば済む話なのですが、せっかくの山暮らし、季節や時間帯によって変わっていく風景をできるだけ楽しみたいもの。なので各部屋の向きや周囲の建物との位置関係にもよりますが、以下のような考え方で立地を選ぶと、プライベートビーチならぬプライベートフォレスト感あふれる空間が手に入ると思います。

・道路の理想的な位置は北側
・次点で東道路または西道路
・南道路の場合は電線なし&未舗装(通行量も要チェック)
・行き止まりの私道や旗竿地も悪くないかも?

ただし、通行量が少ない道路は除雪車が来ない or 後回しだったり、私道や未舗装路は維持に手間や費用が掛かったりといった別の面でのデメリットもあるためご注意を。

③ 岩がゴロゴロ!ロックガーデン

やつなんの家の庭には大小さまざまな岩や石がゴロゴロしています。人呼んで「ロックガーデン」。でもこれはうちの庭だけでは無さそうです。

太古の昔の山体崩壊の名残りなのか、比較的近年の土砂災害の爪痕なのか、八ヶ岳南麓の地面の下は岩や石だらけ。宅地造成の際にしっかり取り除いてあったり十分に土が盛られていれば良いのですが、そうでないと外構に手を加える度に頭を悩ますことになります。やつなんの家もそのパターンで、ちょっとした花壇を作ったり小さな木を植えたりする度に、邪魔な岩を動かしたり埋まった石を掘り出したりと、いちいち手間が掛かります。

また、新築予定で未造成地を購入する場合は、岩や石が基礎工事の邪魔になったり、下手をすると重機でも掘り出せないような大岩が埋まっていたりで、それらの処理に想定外の費用が掛かる可能性も。実際、土地造成の現場を覗くと、掘り出された岩や石が大きな山を作っている風景が当たり前のように見られます。

・家庭菜園や庭作りを楽しみたい人は地面の下もしっかりチェック
・新築や増築の予定がある方も要注意
・未造成地は岩や石の撤去に多大な費用が掛かる場合も

④ 猛烈!八ヶ岳おろし

六甲おろしや赤城おろしなど、大きな山の裾野には強風がつきもの。ここ八ヶ岳南麓も例外ではありません。冬のはじめ頃から春先までの間、かなりの頻度で冷たく乾燥した強風が吹き荒れます。時には家が壊れてもおかしくないような大型台風なみの暴風になることも。

なので八ヶ岳南麓で暮らすには、強風に対する心構えと対策が必要です。対策といっても、風に負けない頑丈な家を探すか、風除けになる木々に囲まれた場所を選ぶぐらいしかありませんが…。

・見晴らしが良い場所は強風を覚悟
・木々に囲まれた場所は比較的穏やかだが、今度は落ち葉問題が!
・冬の強風は暖房費にも影響あり
・倒木被害などにも注意

ちなみに「おろし」は漢字では「颪」と書くそうです。八ヶ岳を下る風…そのままですね。

⑤ 焼芋焼いちゃう?落ち葉問題

やつなんの家は、割と木々が多い場所に建っています。近くには防風のために植えられた背の高い赤松の林も。なので風が強い日も比較的穏やかではあるのですが、その分、晩秋になると大量の落ち葉が降ってきて庭を埋め尽くします。そのまま放っておいても雪のように勝手に消えてはくれないので、熊手やらブロアやらを駆使して掃除するのですが、問題はその後、集めた落ち葉をどう処分するか…。

ひと昔前なら焚き火にして焼き芋のひとつも焼いたのでしょうが、今では火災予防条例やダイオキシンの問題などもあり、勝手に焼却する訳にもいかず(やっていいよと言われても乾燥していて風も強い時期なので怖くてできませんが)。なので燃えるゴミとして出すか、腐葉土にするか、業者さんに回収してもらうかの三択になるのですが、ゴミとして出すには量が多すぎて市指定の小さなゴミ袋に詰めるだけでひと苦労だし、腐葉土にするには石だらけの庭に大穴を掘るか巨大な容器が必要だし、業者さんを呼ぶにはそれなりにお金が掛かるしで、いまだに最適解を見つけられずにいます。軽トラでもあればフレコンバッグに詰めて処分場に持ち込むのが手っ取り早そうですが…。

加えて、防風林に使われている赤松から飛んでくる松葉は処分だけでなく掃除も面倒。その細く尖った形状であらゆる隙間に入り込み、吹き飛ばそうにもブロアの風圧を華麗に受け流してしまうのでかなりイラッとします。特にクルマに対しては、エンジンルームにまで入り込んだり、ワイパーブレードに挟まって拭き残しを作ったり、フロアマットに絡みついて取れなくなったりで殺意すら覚えます。時期によっては松ヤニが飛んでくることもあるので、クルマを停めるスペースは松の木からなるべく離れた場所に。

・落ち葉を選ぶか?強風を選ぶか?
・手間をかけるか?お金をかけるか?
・松の木の近くはなにかと厄介(特にクルマ)

ちなみに赤松は北杜市の「市の木」に指定されているだけあって、市内のいたるところに植えられています。

⑥ ほぼ必須!外収納と外コンセント

やつなん家が八ヶ岳南麓で暮らし始めて一番増えたのが、庭関連グッズ。別にガーデニングが趣味という訳でもなく、どちらかと言うと必要に迫られて購入した道具類なのですが、気がつけばかなりの量に。庭で使う物なので、泥が付いたり草にまみれたりでそのまま家の中に持ち込むには躊躇するものばかりです。という訳で、庭のことは全て庭師さんにお任せ!にでもしない限りは、庭から直接アクセスできる外収納はほぼ必須。やつなん家の場合は1畳ほどの広さの外収納が付いていましたが、寒冷地に付き物の冬タイヤも入れると既に余裕はゼロ。新たに物置を買おうかと考え中です。

またそれらの道具類のうち、刈払機や芝刈り機、ブロア、ガーデンシュレッダーなどは、バッテリーの管理が不用でエンジン式より遥かに安価なAC100Vの有線式がお手軽です。そこで必須になるのが外コンセント。複数の機器を同時に使うことは無いので1箇所だけでも十分といえば十分ですが、リールや延長ケーブルを取り回す手間を考えると、各壁面に最低1箇所あると便利です。

・タイヤの保管も含めて外収納はほぼ必須
・外コンセントはできれば各壁面に

少し話は逸れますが、コンセントといえばエアコン用のコンセントの確認もお忘れなく。八ヶ岳南麓は避暑地だけあって、エアコンが付いていない物件も多々あります。最近の温暖化(?)の影響で後からエアコンを取り付けたくなっても、専用のコンセントが設置されていない場合も。やつなん家も元々エアコンがなかった上に、一番取り付けたい寝室にだけなぜか専用コンセントが来ておらず少々手を焼きました。

⑦ 本当に必要?憧れの天窓

「別荘」と聞いて真っ先に頭に浮かぶのが、天窓(…やつなんだけ?)。元が別荘だったやつなんの家にも当たり前のように付いています。天窓付きの家に住むのが初めてということもあって最初はテンションが上がりましたが…天窓、本当に必要でしょうか?

・完全遮光のシェードじゃないと朝から眩しい(やつなん家ではシェードを追加する羽目に)
・高い位置にあると窓自体やシェードの開け閉めが面倒
・窓掃除が大変(特に外側)
・ガラスの汚れや結露のせいで空はあまり見えない
・ゆくゆくは雨漏りの心配も…

明かり取りとしてはとても効果的だし、開閉やシェードの操作が電動のものもあるし、位置によっては天体望遠鏡を突き出して部屋の中で天体観測ができそうだしと、良い面ももちろんあるので天秤にかけた上での選択を。

⑧ 見落としがち!屋内ごみ置き場

やつなんが暮らす地域のごみ収集は、火曜日と金曜日の週2回(そういえば昔「カーカキンキン、カーキンキン♪」なんてCMがありましたね)。山の中の、しかも半分以上が別荘の地域にしては意外と多いじゃん!と思われるかも知れませんが、これは可燃ごみの収集日。それが不燃ごみになると月2回、ペットボトルや空き缶、段ボールなどの資源ごみの収集に至っては月に1回しかありません。そこで必要になるのがごみ置き場。

ポリバケツにでも入れて家の裏に並べておくのが一番お手軽ですが、なにせ人口よりも野生動物の数の方が多いような山の中。キツネやタヌキぐらいならまだしも、たま~にクマの目撃情報も回ってくるので下手なことはできません。強風で飛ばされたり、氷点下で凍り付いて蓋が開かなくなったりという面倒も考えると、やはり家の中にごみ置き場が欲しいところ。やつなんの家は勝手口の土間がごみ置き場兼用になっていてかなり助かってはいますが、それでも資源ごみが溜ってくると結構つらいものがあります。

・屋内ごみ置き場の有無と広さは必ずチェック(1畳ぐらいあるとかなり楽かと)

ちなみに資源ごみのうち段ボールや新聞雑誌類については、小淵沢や隣町の富士見に民営の回収ボックスがあります。別荘の利用が多い夏場などは満杯になってしまう時もありますが、通販などでどうしても溜まりがちな段ボールを好きな時に処分できるので大変助かっています。

⑨ 備えあれば憂いなし!停電対策

都内から移住してきてちょっと驚いたのが、停電の多さ。そこそこ長い停電が3年間で2回ほど、数十秒レベルのものが年に数回、照明がチラつく程度の一瞬の停電は数知れず。やはり都市部と比べるとインフラの弱さを感じます。

そこで気にしておきたいのが、電気が止まった時に住宅設備の何が使えなくなるのか?ということ。冬の寒さを考えると周辺に「オール電化」の物件はほとんど無いと思いますが、ガスや石油を使うにしてもFFファンヒーターや給湯器は電気がないと作動しないのでアウト。床暖房やIHクッキングヒーターを始めとした家電類も、もちろんアウト。そんな状況の中で、特に冬の時期に命の危険を感じずに停電を乗り切るためには…

・薪ストーブがあると安心(薪割りや掃除などの手間と引き換えですが)
・できればIHよりもガスコンロ
・究極は蓄電池つきのソーラー発電システム
・最近はPHEVの電気を使えるV2Hシステムなども

これらの設備が無い場合は、最低でも「昔ながらの石油ストーブ」「カセットコンロ or キャンプ用のストーブ」あたりは用意しておきたいところです。もちろん燃料の備蓄も忘れずに。クルマ必須の地域なので車中泊や一時避難などで乗り切るという手もありますが…

⑩ これは困った…携帯の電波

リモートワークはもちろん、普段の暮らしにも欠かせない携帯電話。内見の際に、しっかりアンテナが立っていることは確認したのですが…

・携帯電話は現地で実際に通話してみる(最低でも数分間)
・同様にデータ通信についても試しておく
・各キャリアをチェックできるとモアベター

移住早々、やつなん家では「アンテナは立っていても頻繁に通話が途切れて使い物にならない」「アンテナは立っていてもWebサイトが開けない」という状況(A社もS社も。D社は不明)に見舞われ、すったもんだの挙句、最終的にはホームアンテナ(家庭向けの小型基地局)を導入してやっと解決に至りました。光回線が開通するまでの措置としてモバイルルーターを借りていたのですが、当然ながらこれも役に立たず。長時間の通話やネットへのアクセスが必要になる度に、電波を求めてクルマで彷徨うというなかなかつらい日々を経験しています。

この現象、当初はやつなん家のロケーションが「たまたまハズレ」だったと思っていたのですが、その後、食事や買い物に出かけた先でも頻繁に同じような状況になることから、一部の幸運な地域を除いて、小淵沢周辺の別荘地帯では携帯がつながりにくいのがデフォルトだと考えるようになりました。携帯の電波を理由に気に入った物件の購入を諦める人はさすがにいないと思いますが、なるべく早い時期に状況を把握して、必要ならば引っ越し前に対処しておくことをお勧めします。

そんなこんなで

つらつらと書き連ねてきましたが、みなさんのお役に立てる情報は果たしてあったでしょうか?

今回で物件さがしの話は一旦終了、次回からは時系列とは無関係に、その時々に思いついたテーマで記事を書いていきたいと思います。


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